「朗読ろうどく」へのコメント(1)
朗読の楽しみ
「気持ちを込めて朗読しているうちに、だんだん物語の中にずぶずぶと入り込み、身体の奥深いところで何かが震えるような気がする。」と書いている。
ここには、ただ文字をよんでいるときには味わえない表現の境地がある。このきっかけは「気持ちを込めて朗読しているうちに」とあるが、「気持ちを込める」ことと「震えるような」境地とのあいだには、ニワトリとタマゴのような関係がある。いったいどっちが先なのかということだ。
表現よみには「目でよんで→からだで感じて→声に出す」というスローガンがある。気持ちが動くためには、あるいはどんな気持ちになるかの前提には文章の理解がある。「目でよんで」の段階のよみがどうなのかが問題だ。
ほかに「“作者という個体”を超えた心の働きと“読者という個体”を超えた心の働きとが直接感応している」と書いている。この「心」はそれぞれ独立したものではなく、作品のテキストを共有することによる作品の共通理解から生まれるものだろう。