2013年3月3日(日)表現よみオーの会に小林大輔さんをご招待した。そのとき、出たばかりの「小林大輔・朗読集II 恩讐の彼方に/藤十郎の恋」2枚組CDを頂いた。わたしもお返しのつもりで、自著『
朗読の教科書』を贈呈した。
その後、当日のわたしのよみについてはブログに「
朗読会を見に行く効用」として感想を書いてくださった。
今回のCDは「山月記」に続く第二弾である。2枚のCDには、ご自分の同郷の作家・菊地寛の作品「恩讐の彼方に」「藤十郎の恋」の2作全編の朗読が収めてある。今日までかかって全編を聴くことができた。まず感じたのは、じつに丁寧で冷静な読みだということである。
どちらの作品でも、菊地寛の文体のもつ性質をよく表現している。作品は三人称の「語り手」で、地の文とせりふに明確に区分されて書かれている。地の文は一貫して中立的な立場である。だから、地の文をナレーションとして読んで、登場する人物のせりふについてはラジオドラマ風の味つけをしている。作品のテーマや感動はせりふの表現に仕方によって変わってくる。
作品のテーマや感動を聴き手に押しつけることなく、地の文もせりふも、この作品の文体にふさわしいかたちで音声化されている。最初から最後まで、耳障りなところがなく、静かな気分で聞き終えることができた。
作中の語句で、耳では意味のとりにくい語句は分かりやすい語句に言い換えて読んでいる。それを「朗読用補綴(ほてつ)」と呼んでいる。この作品を味わううえでは、そんなことは少しも気にならなかった。
今後、作成される朗読集には、ぜひ「語り手」が一人称の「私」で語る作品を取り入れてほしいという気がした。そのような作品において、小林大輔さんの個性がより明確に発揮されるだろうと思うのである。
「
小林大輔のほのぼの朗読」には日記やイベント案内などが掲載されている。