日本コトバの会には、「書きなれノート」という文章の訓練法があります。
簡単にいうと、「習うよりなれる」という方法です。毎日、15分くらい日記を書くようなつもりで書きなれるために書く訓練をするノートです。
いくつかのポイントがあります。第一は、文章のかたちで書くということです。一般の日記では、単語でメモをしたり、省略した書き方をするものですが、書きなれノートでは、省略しないで必ず文章の形で書くというのが原則です。
第二は、大学ノートを使うということです。安くて軽くて持ち運びに便利なのが特徴です。その大学ノートの片面に一行置きに文章を書くのです。あとで空いた行に推敲した文章を書くことができます。また、ノートの反対の面には、書き足らなかった内容を付け加えることもできます。
第三に、集中した時間にどんどん書いていて、漢字が分からなくても気にせずに書き進めるということです。つまり、完成した文章を書くものではなく、まさに、書きなれるためのノートなのです。
そこで、音声認識ソフトに変わります。音声認識ソフトの使い方の問題点としてあげられる一つがあります。安全にこのソフトの上で文章を完成させてしまおうとする傾向です。そうなると、一つの文章を書き上げるということよりも、仕上げられた文章の漢字かな遣いなども含めて直したくなるものです。
そういう使い方については音声認識ソフトというものはとても弱いものです。文章の流れの中で変換をしているので、部分的な漢字かな遣いはうまく確定しにくいのです。
しかし、書きなれノートのような方式で文章書くには適しています。現にわたしは、ときどき日記代わりに音声認識ソフトを使って日記を書くことがあります。その場合には、細かい漢字カナのまちがいがあっても、気にせずに考えを進めるままに書いて行ってしまいます。
何よりもだいじなのは、文章が仕上がるかどうかということよりも、自分の考えが文章の形で定着してゆくことが見られればそれでよいからです。文章の細かい直しはあとですればよいことです。とくに、正確に変換させるためのメンテナンスでは、考えるために文章を書くことは、いったん忘れて訂正に集中する必要があります。
以上のように、音声認識ソフトでは、「今は何をするための作業か」という目的を定めて使うとよいのです。