朗読ろうどく:なかなか上手くいかないものだ
では、「語尾まできちんと発声する」という課題の実現のために次のような練習をしたと書かれている。
「テキストを練習するときには、意識して文頭の声量を抑え気味にして、文末に差し掛かるまで肺の空気を残しておこうと努力をしていた」
わたしは三つの対策を考えた。
第1は、声を出す直前のからだの緊張、つまりからだを固定してからそおっと声を出すような発声の仕方である。
第2は、間(マ)をとるまでに息を吐ききって、そこでしっかり口を結んで鼻から息が自然に入るような息つぎである。
そして、第3は、第2音節に向かって尻上がりに息を強める調子にすることだ。
次の俳句をよむときに、いわゆる高低アクセントはないが、第2音節には強アクセントがある。それは、鼻から声を抜くような発声ではなく、ノドに飲み込むような発声である。それを発展させると、義太夫のような調子になる。
ふ
るいけや
か
わず
と
びこむ
み
ずのおと
読み出しのときにからだに緊張がないとバスガイドの観光案内のような調子になる。また、文末でしっかり息を吐ききらないとしだいに苦しくなって声が詰まる。義太夫のように尻上がりに息をしっかり吐いていくと、コトバと心情とが一体化して動き出すのである。