音声ブログの
ケロログに「銀河鉄道の夜」の最初の三章の録音をアップした。それから、図書館で借りた榎木孝明の朗読CDを聴いてみた。よみそのものは問題にしないが、テキストが全体としてのっぺりしているのだ。どうしてかと思ってよくよくみたら、「抜粋」と書かれている。80分のCD一枚に収めるためらしい。一覧すると次のようになっている。( )内はわたしの録音の時間。
一、午后の授業 6分19秒(7分6秒)
二、活版所(抜粋) 2分47秒(3分30秒)
三、家(抜粋) 4分36秒(5分23秒)
四、ケンタウル祭の夜(抜粋) 7分02秒
五、天気輪の柱(抜粋) 2分45秒
六、銀河ステーション(抜粋) 6分27秒
七、北十字とプリオシン海岸(抜粋)7分34秒
八、鳥を捕る人(抜粋) 9分29秒
九、ジョバンニの切符(抜粋) 30分57秒
入沢康夫・天沢退二郎『討議 銀河鉄道の夜とは何か』(1979青土社)によると、四章から書き出されて、最初の三章は、あとから書かれたものだそうだ。よんでみると、四章からの文体はまるで詩のような表現がならんでいる。榎木孝明の朗読では、そのあたりを削ってしまったようである。
じつは、わたしも下よみをしたときに「これはてごわいぞ」と思ったのは、四章以下の詩的な詩句の表現であった。たとえば次のような長くてしかも詩的な響きのあるフレーズである。それがこれまでの朗読者によってどうよまれているのかと、関心がわいて録音を探したのである。その第一弾が榎木孝明のものであった。
〈時計屋の店には明るくネオン燈がついて、一秒ごとに石でこさえたふくろうの赤い眼(め)が、くるっくるっとうごいたり、いろいろな宝石が海のような色をした厚い硝子(ガラス)の盤(ばん)に載(の)って星のようにゆっくり循(めぐ)ったり、また向う側から、銅の人馬がゆっくりこっちへまわって来たりするのでした。〉四章
〈またそのうしろには三本の脚(あし)のついた小さな望遠鏡が黄いろに光って立っていましたしいちばんうしろの壁(かべ)には空じゅうの星座をふしぎな獣(けもの)や蛇(へび)や魚や瓶(びん)の形に書いた大きな図がかかっていました。〉四章
しかし、このような部分を声にして目に浮かぶように表現しなければ、宮沢賢治の作品にはならないという思いでよんでみたのである。
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