20年ぶりに幸田弘子さんの朗読「にごりえ」をカセットテープで聞いた。最初に聞いたときの感じは変わらなかったが、一葉作品の朗読の開拓者であることはたしかだ。 (1)一葉作品の「語り口」を表現したこと、(2)舞台朗読のメリハリの工夫、(3)一葉調ともいえる表現法、なとがその成果だ。
しかし、今後工夫すべき問題点もある。(1)近代女性の表現としての人物リアリティ、(2)調子に流れがちなよみにどう心情をこめるか、ここが根本問題だ。あんなに力のこもったよみなのに、眠る人が多いということの理由はこのあたりにある。