◎ある大学で文章添削の実践者のための講義をしました。あらためて驚いたことは、文章の書き方の本は数多くあっても、添削や推敲について書かれた本がほとんどないということです。そこで、わたしはあらためて、文章力の養成を、添削と推敲の角度から考えることになりました。2日間で通算7時間の講義の記録に手を入れて少しずつ公開します。((第1回)2006.2.21、(第2回)3.7)
【連載】第1回
1 文章をよむこと
「添削について書かれた本はほとんどありません。添削はたいへんな仕事ですし、添削について書くことはむずかしいからです。一般に考えられているように、誤字や文末の言いまわしなどを直すだけのことでははありません。じつは文章について
総合的な能力が必要なのです。
「添削には、まず
文章を正確に読む力が必要です。読む力がないと文章は直せません。ですから、添削の実践者の方には、文章を正確に読んでくださいという文章の読み方からお話しなければならないのです。
「文章をどのように読んで、文章をどのように直したらいいのでしょうか。添削においては、文章を直すのですが、勝手に直してはいけません。文章のかたちは直しても、原文の内容を変えてはいけないのです。そのために、
書き手の表現を正確に読まなければなりません。そして、どこまで表現できているか、どこがまずいからうまく表現できていないのか、読みとらねばなりません。しかも、書き手が意図しないことを書き加えたり、文章に表現されていない内容を付け加えてはいけないのです。ですから、正確によむということは何よりも大事なことなのです。
「ということで、これから、添削とは何かということを話したり、文章をどう直すかという技術的なこともお話しなければなりません。さらに、
添削者の文書力も問題になります。文章を書く力と文章を直す力は一体のものだからです。しかし、大前提となるのは、何よりも
文章を正確によむ力なのです。文章のかたちの変化から意味の変化を知る能力です。原文に手を入れれば入れるほど別のものになってしまいます。読点を一つ変えただけで意味がちがってしまうことさえあります。ですから読みの力が基本となるのです。
「さて、ここに今回の課題について、みなさんの添削とわたしの添削とのコピーがあります。みなさんの添削とわたしの添削とではだいぶ違うところがあります。どこが違うと思いますか。どうですか。わたしの添削は
削る部分が多い点に特徴があります。アイマイな言い方をしているところは思い切って削ります。ですから、添削をされて怒る人もいます。
わたしの通信講座でもプライドを傷つけられたような気持ちになる人がいるらしいのです。
「まず最初に考えなければならないのは、
何のために添削をするのか、このことです。添削の目的とは何でしょうか。もちろん、この学校での目的です。それは文章力の向上でしょう。それでわたしはまず、
書き直しの重要さをあげます。添削したままではなく、必ず
書き直しをして再提出してもらうことです。添削で返されたものをただ見ても、それでは文章の力は向上しません。(
つづく)