著作権法第37条は、(点字による複製等)として、次の3項目がある。あらためて読んでみると、それぞれについて思うことが出てくる。
(1)公表された著作物は、点字により複製することができる。
(2)公表された著作物については、電子計算機を用いて点字を処理する方式により、記録媒体に記憶し、又は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含む。)を行うことができる。
(3)点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を目的とする施設で政令で定めるものにおいては、もっぱら視覚障害者向けの貸出しの用に供するために、公表された著作物を録音することができる。
(1)は点字が明らかに著作物の「複製」という判断である。これに準じて、(3)の音声訳(音訳)の規定が出てくるわけだ。現在、音訳の録音は「もっぱら視覚障害者向けの貸出しの用に」なっているので、一般の人たちは聴くことができない。ところで、「朗読」も音訳と同等の行為、つまり「複製」と解釈されているので、さまざまな制限が加えられることになるのだ。
(2)は、あいまいな文だ。( )内の表現はインターネットでの公開の意味だろう。あえて解釈するなら、パソコンなどを用いて点字著作の作成をするためなら、コンピュータに入力させたり、そのデータをインターネットで公開できるということらしい。だが、著作物が記録されたテキストデータが必ずしも点字著作の作成の使われるとは限らない。つまり、著作権の切れない著作が青空文庫のようなテキストの形式で公開されることはできないということになる。
だが、インターネットで出版された著作物についての批評などをするばあいには、どうしても「引用」としてのテキスト化の必要が出てくる。この場合、「引用」の原則が有効になるだろう。だから、完全に著作物のテキスト化が禁止されているわけではない。
結論的にいうなら、著作権法第37条でいう著作物の「複製」は、点訳に準ずる音声訳(音訳)についての規定である。タイトルの(点字による複製等)がそれを示している。ならば、たんなる著作の写しではなく、創造的な行為の加わった「朗読」は「複製」としての限定はなくなることになる。