ブログのコメントのすすめで、
神林長平『
言壺(ことつぼ)』(中央公論新社)を買って「栽培文」を読んだ。
おどろいた。いわゆる哲学小説というのだろうか。寓話ともSFとも読める書き方で「言葉ポット」(著作タイトルの「言壺」はこのことのようだ)を使ってコミュニケーションをする家族の話が書かれている。そこで展開される一つのテーマは言語論だ。文字言語と音声言語がどのような関係があるか。小説のかたちでこれほど深く鮮やかに書かれた作品を読んだことはなかった。
それでは文学としての人間の描き方はどうかというと、それも初期の吉行淳之介の描いた人物たちのような印象である。クールでありながら、そこにたしかに人間の存在感がある。中心人物である木こりの娘のかかえる家庭内の悩みも十分に描かれている。
わたしが何よりも感心したのは、この作品は文学でしかできないことを書いているということだ。アニメにも映画にも、いわゆる視覚芸術には絶対に置き換えられないだろう。としたら、声の表現にしてよんで味わうしかない作品だ。文章も美事に磨き抜かれている名文だ。
わたしが
ケロログの
Blog表現よみ作品集でアップしている「声でよむ名作本」のシリーズに入れたい。そして、ふと思うのは、こういう作品ならば、まさにオーディオブックにするにふさわしい作品だと言える。そして、こんな作品の魅力は、朗読ではなく、表現よみでしか表現できないに違いない。